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March 25, 2006

日本人の「バイリンガル」幻想

だいぶ暖かくなってきましたね。色とりどりの花が目に飛び込んできて、あらためて日本の春の豊かさを堪能しております。

そんな私の最近のはまりモノは「干し梅」です。コンビニでよく見かける、カンロの「まるごとおいしい干し梅」なんかとっても美味で、気付いたら一気に一袋ってこともしばしば。そんな私も実は昔は梅干しが食べられない子供だったんですが、いつの頃からこうなってしまったんでしょうか(笑)。味覚って変わるもんだね、としみじみしてしまうことよ。

んで、突然話は本題に入ります。
時々出入りするネット掲示板があるのですが、そこでよくこんな質問に出会います。

「子供をバイリンガルに育てるにはどうしたらいいのでしょう?」

この手の質問を見るたび、一人の親としてある意味微笑ましく思うのですが、同時に日本人の持つ「幼少の頃から英語に触れさせれば子供は自然に英語も話せるようになる」といった「バイリンガル」幻想の大きさに怖くなってしまうのでした。

まず最初に「バイリンガル」の定義が必要になるのですが、私の中では「英語、日本語両方の文化的背景を持ち、どちらとも完全にネイティブとして話せる」ことと考えています。そして、このレベルに引き上げるのは極めて困難だし、同時に極めて危険を伴うことだと思います。

言葉というものには必ず「文化」が付いてくるので、真の意味で「バイリンガル」になるには両方の「文化」を知っている必要があると思います。そしてその文化を「ダブル」で身につけようとして失敗すると、「ハーフ」どころか「アイデンティティの喪失」につながってしまうおそれがあると思うのです。

私もアメリカに住んで、「日本の血の入った人」とたくさん知り合いました。日本語を話せる人、話せない人、当然いろいろいる訳ですが、「自分のルーツ」を明確に持てないで困っている人が意外に少なくないことに驚きました。

eigowo 最近、「英語を子どもに教えるな」(市川力著、中公新書ラクレ)という本を読みました。この本は、まさにその辺りの「困難さ」「危険」を実例を挙げて詳細に述べてあります。表面上バイリンガルに見えても、実は「両方とも『日常会話言語』レベルであって、どちらも『教育理解言語』になっていない(書き言葉による抽象的思考ができない等)、母語のない状態になってしまう」例は少なくないようです。

ちなみにこの本、「幼少時からの英語(バイリンガル)教育」に関する警鐘だけでなく、「教育・子育て全般」に対する非常に意義深い提案が多数なされています。「子どもの教育」という名の「親のエゴ」に陥らないために何が必要か、いろいろと考えさせられる一冊ですので、 英語教育に興味がある方はもちろん、そうでない方も一読の価値は十分にあると思います。

「あなたの息子は帰国子女になる訳だけど、じゃあ今後どう育ってほしいのですか?」という質問には、私は胸を張ってこう答えたいと思っています。

「英語がそれなりにきちんと話せる『日本人』になってほしいです」

日本語をしっかり覚え、日本人としての根っこを築いた上で、コミュニケートの手段としての英語をきちんと覚えていく・・・それが最良の方法かどうかは分かりませんが、少なくとも今後日本をベースに生活していく(であろう)息子にとっては実体験をふまえた「いい方法」のような気がしています。

※ここでは「英語」に限定していますが、これは今現在彼が英語を話せると言うだけの理由で、もし可能であればその他の言語も同様に覚えて欲しいとも思います。と言うだけは簡単なのですが、そのためには私自身その他の言語をきちんと学んでいるという姿勢を示さないといけないなあ、と思っているところだったりします。

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Comments

バイリンガル教育って親のエゴだったんですね!衝撃です。
“アイデンティティーの喪失”の問題に関しては以前テレビで見て、さほど気にも留めていませんでした。
2ヶ国分わかるからお得とは決っして思わない人がいるということ。
自分の中にまだ答えはありませんが、今後考えていこうと思います。

Posted by: manbow | March 26, 2006 at 07:44 PM

★manbowさん
語弊を恐れずに言うと、親のやることって本質的に「子供のため」と「親のエゴ」が表裏一体だと思うんですね。
そして中でも、「英語を話せるとカッコイイ、今後の国際化社会で役に立つ」と「安易に」早期語学教育に走ってしまうと、実はそのしっぺ返しをくらってしまうことがある、ってのが今の「バイリンガル信仰の罠」だと思うのです。

もちろん教育に関することってどれが正しいとかないですし、親にしかその権限はないと思うので、私が偉そうに言うことではないとは思うんですが、ただ実際にアメリカで生活してみて、「言葉」というツールと、「アイデンティティ」というその人自身とを絶対に混同してはいけないな、と強く思ったのですね。

「言葉」を操れるという能力はもちろん素晴らしいことなのですが、本当のコミュニケーションってそのもっと上位に築き上げるものなんですよね。

Posted by: ぶるぼん | March 26, 2006 at 09:26 PM

この話と関連するかもしれませんが、新聞記事で子供を生まれてきてから英語漬けにした結果、話し始めるのが遅くなってしまったご家族がいたそうです。
何でも英語ばかり聞かせて、ご両親が話しかけたりする触れ合いの機会が極端に少なかったとか。
言葉っていうのは所詮ツールに過ぎないんだよ、その奥底にある物を学び取れる期間は比べようも無いくらい素晴らしいものなんだよ、という認識は忘れてはいけないと思います。

Posted by: そう | March 26, 2006 at 10:06 PM

自分の経験から言うと、やはり小さい頃から
英語をやっててよかったなと思います。
留学もできたし。

ただ、英語への「あこがれ」だけで、
親が子供を英語圏に連れて行き、
バイリンガルにすることは、
「親が言ったことが子供が親と同様の文化を持ち合わせていないために、
子供は親の言うことが理解できない」という悲しい現実に
ぶち当たるのではないのかなと思います。
ここで悲しい思いをするのは間違いなく親。
子供はその文化的背景を知らないから、
どうしようもないですもんね。

でも、マルチリンガルになれるのであれば、
何か1つの言語をしっかり習得した上で、
次の言語を習得したいですね。自分は。

Posted by: koohey | March 27, 2006 at 12:38 PM

★そうさん
お父さんが日本人、お母さんが中国人で、住んでいるのがアメリカ、という友人がいます。結局そこのお子さんは3カ国語を一気に覚える事になったわけですが、やっぱり話し始めるのが一般よりだいぶ遅かったと聞きました。
言葉を覚えるってのはそれだけ子供に負荷がかかることなんだよ、という意識は決して忘れてはいけないと思います。

Posted by: ぶるぼん | March 28, 2006 at 06:24 AM

★kooheyさん
ご指摘の通り、とにかく怖いのは「あこがれ」だけで英語を覚えさせようとして、そこに付随する「問題点」を全く把握していないことだと思います。何事にも功罪はあるわけですから・・・

本文に出てきた言葉を借りると、「自分」を主張できるだけの抽象的思考ができる「教育理解言語」を母語できちんと持っていないと、本当の意味での「バイリンガル」にはなり得ないと思うのですね(見かけ上「バイリンガル」に見えるかもしれませんが)。
親がその認識を持っていないと、極論すれば「親のエゴで子供をつぶしてしまう」ことになりかねないと、切にそう思います。

Posted by: ぶるぼん | March 28, 2006 at 06:30 AM

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